投稿者:兵庫県 64歳 ハートインさん
これは私の母が高校2年生のときの話です。
4歳のいとこの男の子が心臓弁膜症で亡くなりました。
それから2~3日経ったある日の深夜、母がダイニングでテスト勉強をしていると、玄関のドアノブをカチャカチャと回す音が聞こえたそうです。
母はドアの向こうの相手を空き巣だと思ったそうですが、これはその頃、鍵を掛け忘れた家に空き巣が入ったという事件が近所で多発していたからでした。
しばらくすると祖母が音に気付いて起きて来たそうで、母は空き巣がドアの向こうにいることを伝えました。
しかし、祖母は冷静に空き巣ならドアにカギがかかっていると分かった瞬間に、あきらめるのではないかと指摘しました。
確かにそうだと思った瞬間、祖母が「もしかしてこの前亡くなったあの子の幽霊?」とつぶやいたそうです。
すると、ドアノブを回す音がピタッと止みました。
嫌な沈黙が訪れ、空気が重くなったと感じた瞬間、ベランダの方からガチャガチャガチャ!という音が聞こえて来たそうです。
びっくりしてそちらを向くと今度はベランダの窓のロックが見えない何かによってしきりに回されていたのです。
流石に祖母もパニックになっていたそうなのですが、母はいとこの男の子なら入って来ても悪さはしないと思ったらしく、思い切って窓を開けました。
すると、またしても沈黙。
しばらくの間は、何かが起こるのではないかと2人とも身構えていたそうなのですが、結局何も起こらなかったそうです。
母が肩の力を抜いた瞬間、祖母が「もしかして……」とつぶやき、下駄箱に向かいました。
そこには、いとこの男の子が入院した時に、病院の手違いで家に送られてきていたその子の靴がありました。
緊急の入院や手術、葬式などでバタバタしていたせいですっかり返すことを忘れていたそうなのです。
しかし、霊が家に来る理由はこれしかないと2人とも確信したらしく、次の日に速達でいとこの家に返したそうです。
その靴は、よほどその子のお気に入りの靴だったのですね。
小さな子供のみならず、生きていても、お気に入りはそばにおいでおきたいと思うものです。
その子もきっと、そのお気に入りの靴を忘れられなかったのでしょう。
それからは今回のような心霊現象は起こらなかったそうです。
霊が自分のものを取りに戻ってくることがあると思った母達は、家の中に持ち主に返し忘れている物がないかどうか調べるために、念入りな片付けをしたそうです。