投稿者:愛知県 46歳 きりたんぽさん
社会人になり、一人暮らしにも慣れ始めたころの話です。
小物や写真立てなどが、家を出る前には所定の位置にあるのに、帰宅すると床に落ちていたりすることがありました。
ただ、何度も同じような現象が起きると自分の中で、こう思うようになってきました。
「玄関の鍵はかかっているし、窓の鍵もかかっている。誰かが侵入した形跡もない。そういえば、このアパートは生活音もよく聞こえるし、上階の住人の歩く振動を感じることもあったな。そうか、振動や風で、物が落ちたりしたんだな。」と。
違和感は感じながらも、原因が振動や風であることは可能性としてはある。
と自分に言い聞かせていました。
いつしか、そんな状態が当たり前になり、何も感じなくなってきました。
そこから半年経ったころ、いつものように、残業をこなし24:00前後に帰宅し、コンビニで買った弁当を片手に、リビングでテレビをつけながら、弁当を食べていました。
外は雪が降っていたこともあり、部屋の中が妙に寒く感じていました。
自分の部屋は、2階立てアパートの1階一番奥にあり、隣人の生活音もたまに聞こえてきます。
ただ、24:00を過ぎているので、眠りについている方も多く、そこまで生活音は聞こえてきません。
しかし、この日は違っていました。
隣の隣の部屋あたりから、チャイム音が聞こえてきました。
ドアをガチャと開ける音、そしてドアが閉める音。
隣の部屋でもチャイム音が聞こえ、ドアを開ける音、ドアを閉める音。
「次は自分の部屋かな、誰がこんな遅い時間に訪問するんだろう?」と思い、チャイムが鳴るのを待っていました。
ところが、自分の部屋のチャイムは鳴らず、2階の住人の部屋のチャイムが次々と鳴りました。
「なんで、自分の部屋は飛ばしたんだろう? 夜遅いし、まあいっか。」そう思っていると、
「コンコン、コンコン」。
自分の部屋の玄関をノックする音が。
この時、ドキッとしたと同時に、全身に鳥肌が立ちました。
怖くなり、居留守を使おうと思い、息をひそめていると、「コンコン、コンコン」再度ドアをノックしてきました。
居留守を続けるのは、危険なのでは。と直観的に感じたため、恐怖を感じながらも、恐る恐るドアを開けると、髪の長い女性が一人、髪で顔を隠すように俯きながら立っていました。
「夜分遅く、すみません。お尋ねしたいことがあるのですが、私のシャンプーを知りませんか?」
「え?シャンプーですか?ちょっと分からないです。」そう答えると、女性は顔を上げ、真っすぐ私の方を向きました。
「この部屋にありますね。やっと見つかりました、有難うございました。」
そう言うと、女性は私に一礼し、去っていきました。
私は怖さと拍子抜けの両方で、呆然としていました。
なぜ、女性はこの部屋にあると言ったのか、自分は何も渡していないのにお礼を言って去っていったのか。
後日、大家さんと話しをする機会があり、女性の特徴などの話をすると大家さんから衝撃の事実を聞きました。
10年前ぐらいから、定期的にそういう話を住人の方から聞くのだけれども、その女性自体は心当たりがなく、誰なのか分からない。
ただ、住人の方々から聞く、女性の特徴や、話の展開はいつも同じで、その女性が来てからは、部屋の中で起きる怪現象は無くなるんだよと。
今現在、あの時のアパートは壊され、コインパーキングに変わってしまっていますが、あの女性は何だったのか、いまだに謎のままです。
