『意味怖』恋愛ゲーム

それは、ゲーム好きの友人から紹介してもらった、とあるゲームをダウンロードしたことが始まりだった。

友人の話では、なんでもネット上に面白いゲームがあるということで、俺はその話に乗って自分のパソコンにゲームをダウンロードした。

ゲームの内容は、どこにでもある恋愛シミュレーション。
タイトルも、≪Memorial Of My Lover≫なんていう月並みなもの。
これだけなら、どこにでもある普通の恋愛シミュレーションゲームだ。

だが、これを俺に紹介した友人は、「とにかく後味が悪くなること請け合い」と言ってにやりと笑っていた。
なぜ、後味が悪くなるのか。
それは自分の目で確かめろと言って、友人はそれ以上語らなかった。

恋愛ゲームで後味が悪い?
まさか、どんなヒロインと恋に落ちても、最後は悲劇的な結末を迎えてしまうのか?
それとも、主人公がどれだけ頑張っても誰とも両想いになれず、絶対にフラれて終わるのか?

なんだか妙に気になってしまい、俺は自分の好奇心を抑えることができなかった。
別に、恋愛ゲームなんぞに興味はなかったが、ここはひとつ、友人の言っていた言葉の真相ってやつを探ってみよう。

そんなこんなで、俺はダウンロードしたゲームを起動し、早速プレイしてみることにした。
内容は、これまたどこにでもある恋愛ゲームのようで、アニメ調の絵で描かれた女の子たちが画面に表れて、彼女たちとのコミュニケーションを楽しむというものだった。

正直、俺はこういったタイプのゲームに興味はない。
ゲームをやるならシューティングやアクションと決めていたし、ダラダラと文章を読むのも好きじゃない。

だいたい、恋愛ゲームに出てくる女の子なんて、所詮はマメな行動とプレゼントで落ちるような連中ばっかりだ。
性格の差こそあれ、攻略の基本的な部分は同じ。
相手の反応を見逃さず、それに応じて喜ばせるような選択肢を選び、お膳立てをしてゆけば良い。

こんなゲームにはまる連中の考えていることなど、残念ながら、俺には理解できなかった。
現実の女の反応なんて、こんなに単純なもんじゃない。
それがわかっているからこそ、画面の中の女の子が照れ臭そうに笑っていても、なぜか滑稽に思えてきてしまう。

ただ、そんなゲームではあったものの、ストーリーそのものは、なかなかどうして凝っていた。
別に、特別な事件が起こるわけではないのだが、高校生の日常ってやつを実にきめ細かく描いている。
テキストの文章も読みやすく、サウンドノベル形式のゲームが嫌いな俺でも、すんなりと受け入れることができるものだった。

あえて欠点を挙げるならば、主人公キャラの男のグラフィックまで用意されていることが、プレイヤーの主人公に対する共感を添いでいると感じてしまった。
普通、こういったゲームって、主人公視点でウインドウ表示されているものが多い。
それなのに、画面の中に主人公の男まで登場するもんだから、主人公=俺という図式がどうしても頭の中に浮かんでこない。
なんというか、他人の恋愛を覗き見して、それがうまくいくように操作している……。
そんな感じがしてしまうのだ。

まあ、そうは言っても、恋愛ゲームに興味のない俺にとっては、この程度の距離感があった方がよかったのかもしれない。
恋に恋して自分に酔ってしまうくらいなら、キューピッドの代わりになって、他人の運命を幸福に導いてやるってのも悪くない。

気がつけば、俺は一週間ほどでゲームをクリアし、全てのヒロインを攻略し終えていた。
ヒロインそれぞれとのハッピーエンドを全て見終え、意外にも感無量な気持ちになっていた。

ただ……残念なことに、友人の言っていた言葉の意味だけは、最後までわからずじまいだった。
どのヒロインともハッピーエンドを迎えてしまったからかもしれないが、あいつの言っていた≪後味の悪さ≫みたいなものは、全然感じることはできなかった。
いや、それどころか、ゲームのストーリーそのものは、超がつくほどの純愛青春ドラマだったんだからな。

やれやれ。
こんなことなら、今度はあえてバッドエンドになるように、悪の魔王になったつもりで主人公の男を操作してやるか。
そんな悪戯心を抱きながら、俺はエンディングを見た後に入手できるCG集を眺めていた。

まるで、学生時代のアルバムを見ているかのように、女の子たちとの思い出のシーンが流れてゆく。
どの子たちも、主人公の男と一緒にいるときは、とても幸せそうな顔をして笑っている。

まったく、これのどこが後味の悪いゲームなんだ?
まさかあいつ、リアルで女がいないもんだから、ゲームの中の男に嫉妬してやがったのか?

ふと、そんな考えが頭をよぎったとき、俺は奇妙なことに気がついた。

目の前の画像、主人公が自分の部屋で、女の子と談笑しているやつを見たときのことだ。
部屋の中にある鏡の中に、赤いワンピース姿の少女が映っていた。

なんだ、こいつ?
こんなキャラ、ゲームの中のヒロインにいたっけか?
主人公の男は一人っ子って設定だったから、姉や妹ってわけでもないだろうし……。

不思議に思いながら、俺は画像の中にある鏡に映った少女の姿をじっと見た。
すると、その少女の手に銀色に光る何かがにぎられているのがわかり、俺は自分の目を疑った。

果物ナイフか、それとも包丁か。
とにかく、凶器を持った少女が主人公の部屋にいるのは間違いない。
しかも、更に目を凝らしてみると、少女のいる場所はクローゼットの中じゃないか!!
半開きになったクローゼットの戸のすき間から、ナイフを持った少女が顔をのぞかせている。
そんなホラー映画のような光景が、鏡に映し出されているのだ。

いったい、これは何なんだ。
まさか、実はこのゲームは呪われているってオチで、あいつの言っていた後味の悪さってのは、そういった類のことなのか!?

俺は急に心配になって、今までに集めたCG画像を片っぱしから開いて行った。
そのほとんどは微笑ましい清純恋愛ドラマのワンシーンだったが、よくよく見ると、ところどころで例の少女の姿が確認できる画像があった。
だが、なぜか少女は一貫して鏡の中にしか存在せず、彼女自身が……例えば、電柱の影なんかから覗いているシーンはない。
強いて言えば、帰宅中にヒロインと談笑している場面でそんな絵があったような気もするが、それでさえ、道端に置かれたカーブミラーに映ったものだった。

鏡のある場所にしか現れない、ナイフを持った謎の少女。
いったい、彼女の正体はなんなのか。
言いようのない不安に駆られたまま、俺はふと、ゲームのタイトルを思い出して戦慄した。

このゲームのタイトルは、≪Memorial Of My Lover≫。
そう、≪Memorial Of My Lover≫だ。

そのタイトルが表している真の意味と、主人公の男のグラフィックまで用意されていたわけ。
そして、俺が今までゲームの画面を通して見ていたのが何だったのか。

全てを理解してしまったところで、俺はなんとも言えぬ後味の悪さを感じて思わず顔をしかめた。

まったく、確かにあいつの言った通りだ。
このゲームを作ったやつは、とんでもない悪意の持ち主だな。

もう、こんな酷い恋愛ゲームは二度とごめんだ。
やっぱりゲームは、爽快さ重視のシューティングやアクションに限る。
そう、心の中で呟いて、俺はゲームのデータをアンインストールする作業に入った。


エンタメ(全般) ブログランキングへ

オカルト ブログランキングへ
まとめ

私のブログに一票を!!
ブログランキング
PVランキング
全般人気ブログランキング
ブログ王ランキングに参加中!

okorudaikazan

投稿者プロフィール

怒る!大火山サイトの運営者で編集長の閻魔と申します。

この著者の最新の記事

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 『赤怨呪』の知られざる活動の秘密

  2. 火葬場を愛する男の謎に迫る!

  3. 悪霊と守護霊が戦争状態に突入するぞ!Xデーは8月13日~20日

  4. 『意味怖』恋愛ゲーム

  5. 『意味怖』今、仕事が終ゎり

  6. 『意味怖』いじめられっ子

  7. 『意味怖』黒いスーツを着た男。

  8. 『意味怖』理系彼女

  9. 『意味怖』文化祭の準備で学校に残っていた。

  10. 『意味怖』旅

ページ上部へ戻る